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MORIYAマガジン

本物に接したときに、感謝と、謙虚さを感じ、忘れられない出会いを経験する。

花屋の仕事を始めてから2年が経ち、花を扱うことにも慣れ、経営するという感覚も少しずつ芽生え始めた頃、ちょうど今から12年前、お花1本1本に、たくさんの想いが詰まっていることに気づいたきっかけがあります。

以前、まとめた記事【なぜお花はそこまで人の心を動かすのか】では、お花が持つ、人の心を動かす力に気づいた、お花の魅力や、人と人との関係性、お花を贈るという気持ちの大切さについて記載しました。

今回は、お花そのものの美しさの背景にあるものについて、より深く感じられるようになったきっかけのお話を記したいと思います。

起業2年目の出来事

今から12年前ということですから、22歳。

何も分からず起業をして、毎日、お花のことを勉強しながら、たくさんのお客様にも教えてもらいながら、一緒にお花を楽しみたい、そのような気持ちでお花と向かい合っていました。

お花の仕事をしていると、日本全国の産地から、数え切れない種類のお花が出荷され、その季節だけ出会えるお花があることに気づきます。

ちょうど、起業をして2年ということで、お花との出会いも一期一会ということに気づき始めたタイミングでもありました。

いつも通りの1日、仕入れに行き、今までに見たことがないバラ園さんのピンクのバラを仕入れ、お店に持ち帰り、箱を開けた時、人生で最高のバラと出会うことになります。

輪の大きさ、形、バランス、立ち姿、葉の美しさ、どれをとっても、他の追随を許さず、商品作物における生産物というよりも、1本の作品と言うべきバラ。

そのバラと出会った時、恥ずかしながら、その場で言葉にもならず、号泣。

圧倒的な品質に感動したことはもちろん、このバラを育て上げた生産者さんの、努力や苦労を考えると、どれほどのものか!!と思えば思うほど、スタッフがいる前なのに、涙が止まらず、そうしている内に、ありがたいという気持ちが芽生えてきて、また涙が止まらず。

その時、私はそのバラの後ろに、はっきりと人の存在を認識しました。

背中でものを語る

背中ものを語るとはよく言ったもので、バラでその人の誠実さや、こだわりの強さを感じることになり、今でも初心を忘れないようにと振り返る、お花の大切さ、お花への敬意を持って仕事をする重要な機会となりました。

自分の責任で花屋を始め、とにかく一生懸命に前を向き、一通りの経験を終えたタイミングでこの最高のバラと出会えたことには大きな意味があると思っています。

始めたすぐの頃であれば、綺麗なバラだなというぐらいの気持ちで終わっていたかもしれませんし、もちろん2年間で見てきたバラとの比較もあるし、自分自身がクオリティを上げるためには努力をしなければならないんだということを実感し始めたタイミングでもありました。

どんな仕事にも自分の仕事に対する敬意を持つタイミングがある

経験を積めば積むほど、上達の論理における、素晴らしいクオリティを生む要素を感じ、自分自身にその上達の論理や要素を取り込んでいくこと自体が仕事が楽しくなり、仕事を楽しむことができるようになります。

「とりあえず3年間は続けなさい」

このように言われるのは、私が2年目に最高のバラと出会ったようなきかっけやタイミングが、どの仕事においてもあるからです。

花屋さんに限らず、みなさまの今までの経験の中でも、きっと、私にとっての“バラ”があったはずです。

そのきっかけを大切な初心に据え置くことで、私たちは、後輩や仲間達に、仕事の意義や、やり甲斐を伝えることができるようになるはずです。

私たちが創り出す最高の価値を社会に発信し続けることが、私たちに最高の気づきを与えてくれた先輩方に対する恩返しにもなります。

背中を見せるということは、何も言わず、無言でわかりなさいと伝えることではありません。自分自身を作品や仕事で表現し、自分自身が謙虚な姿で最高の物を創り出すために向き合っている姿を創り出したものに投影するということです。

私も、あのときに出会ったバラや生産者の方に恥ずかしくない仕事をするために、これからもお花たちと真剣に向き合っていきます。